本物の才能

私はこう見えても絵画が得意、いや得意でした。。。


小学校の作文で…。


恐らく「将来の夢は?」みたいな題材だったのだろう。


「将来は、ルノワールみたいな画家になりたい!」と書いていた。

言わずと知れたフランス印象派の第一人者である。


どこで、そんな知恵を得たのかよく覚えていない。

自分の大器さ加減におののくばかりばかりである。


時は経ち、高校2年の後半 進学の話が騒がしい頃。

勉強だの、偏差値だのというのが面倒だったので、ある意味逃げ口上に取っておいた自分ながらの保険だったのかもしれない。


画家


今時、画家なんて食っていけないと当然、周りは猛反対。


この年頃は(誰でもそうだと思いますが)反対されれば余計にやりたくなる。


いつしか、自分の中で正式な夢となった。



しかし、ある時たわいもない日常でその夢は脆くも崩れることになった。


美術の授業で、「この教室から見える風景を描く」がテーマ。


皆がこぞって自分の気に入ったポジションを探す。


自分に自信があった私は皆が選ばない場所を最後に選んだ。


どんなに絵にならないアングルでも一番になる自信があったから。


そこへ、ポジションを取り損ねた子が隣へ来た。


私は気にもせず、無我夢中にデッサンをし、色を入れる。

山間が少し霧を被った様は、誰にも表現できないだろうと自分の持ち得る技術を惜しげもなく絵にぶつける。

実際に、そんな技術を持っている子はいなかったし、我ながら良い出来栄えだった。


しかし!


ふと、隣の子の絵を見た瞬間、時間が止まった。

「目が点になる」「開いた口がふさがらない」…全ての形容を集めても言い表せないくらいの衝撃だった。


隣の名画は、『青』だった。


風景画がすべて青一色の濃淡だけで描いてあった。

空は元より、家も、山も、煙突も…。


自分に置き換えてどう想像しても行き付かない領域。


これが「才能」なんだ…と。

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