先入観
自由が丘でお店をやっていた時の話です。
あっ、ちなみに味噌料理専門店です。
ある日、団体のお客様がいらっしゃいました。
同窓会の二次会のよう。
通常、テーブル席は4人掛けしか用意していなかったので、そそくさとレイアウトを変更して12人掛けの宴会用に。
お座りになって間もなく、お客様が「あれ見て!」と騒ぎ始めました。
当時、店内には「味噌」にまつわる諺の数々を紹介していました。
どうやら、その中に気になる文言があったようで、それをダシに一人の女性を半ば揶揄うように。
標的となった女性は、開口一番「味噌は塩分が高いから体に毒!」と。
その方はお医者さんでした。
そう、気になさったのは「味噌汁一杯医者殺し」という諺でした。
内が味噌料理専門店であることを知らないでいらっしゃったのだろう。
一次会でお酒もだいぶ入ってらっしゃるようだし。
最初は気にも留めませんでしたが、料理を運ぶ毎に何かと一言おっしゃるもので、「何か?」とお尋ねしました。
「体に悪いの知ってて食べれないわ、他に何かないの?」
この一言で、私の導火線に火が着きました。
私:「勘違いなさっていませんか?味噌は大豆と塩で作った発酵食品であって、塩ではありませんよ」
お客様:「それは違う!塩分の含有量が最も高い食品だから立場上薦められない。貴方は一日あたりの適正な塩分摂取量をご存知ないの?」
私:「もちろん知ってますよ。厚生労働省の公示ですよね?どこかに味噌が悪いと記載されてましたか?」
お客様:「知ってるならどうして味噌なんか使うの?高血圧の人はもっと気にしなきゃいけないんだから、出てくる料理全てが味噌だととんでもないことになるじゃない!」
私:「勉強不足で申し訳ありません。味噌が体に悪いという研究結果はどこにありますか?」
お客様:「たくさん学会で発表されているわよ!」
私:「いろんな研究結果が発表されているのは自分なりに勉強していますが、実は味噌は体に良いとか、味噌を改めて見直すべきだという説しか目にしていないものですから是非教えて頂けませんか?」
お客様:「…。」
私:「お伺いしてよろしいですか?朝食は何をお食べになりました?」
お客様:「朝はトーストと珈琲と決めている。炭水化物を摂りたくないから」
私:「お昼は?」
お客様:「体の事を考えてだいたい蕎麦。今日もそうしました。」
私:「一次会はどんなお店だったのですか?」
お客様:「イタリアン」
私:「逆にお伺いしたいのですが、今日それだけのお食事をされて、トータルどれだけの塩分を摂られたとお考えですか?最終的に、味噌汁を食膳から抜くだけで対応できてると思ってらっしゃるのですか?」
お客様:「…。」
私:「一日の塩分摂取量を気になさるのでしたら、食生活全体を見直すべき話で、あたかも味噌が健康被害のやり玉に上がるのは到底理解できません。先ほどもご説明しました通り、味噌は発酵食品であって、酵素や乳酸菌が豊富で摂取すべき食品だとお勧めしています。」
お客様:「…。」
私:「炭水化物や塩分が昨今の健康番組でテーマになっているのは知っていますが、日常の生活で皆さんが実践なさっている方法がとんだ勘違いです。お店のお客様にも高血圧で食事指導を受けたら、真っ先に味噌汁をやめろと言われたという方がたくさんいらっしゃいますが、本当に正しいとお思いですか?
健康番組ネタなど間違いだらけ、味噌は日本人に不可欠な健康食品だという信念に基づいて私は味噌料理を提供していますし、それで代金も頂戴しています。」
お客様:「…。」
お友達もいる中でしたからメンツもおありだったと思いますが、最後まで謝ってはいただけませんでした。
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